2019年02月21日

権利の主体 1−3 司法試験入門 択一式民法 オリジナル問題

甲が失踪していたので、配偶者乙の申し立てにより失踪宣告が為されたが、その後、甲が生存していることが判明し、失踪宣告が取り消された。この場合に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

1、乙は失踪宣告により、相続した財産を時効取得することはできない。
2、乙と甲の父母との姻族関係は、失踪宣告によって当然には終了しない。
3、甲の失踪宣告により、国庫が恩給支給を免れていた場合、失踪宣告の取り消しにより、国庫は甲に対して財産の返還義務を負う。
4、甲の生存について悪意の乙は、甲の預金債権を相続し、その全部を遊興費に使用した。この場合において、乙はその金額に利息を付して返還しなければならない。
5、乙は、失踪宣告により相続した不動産を失踪宣告が取り消される前に、丙に譲渡した。乙が甲の失踪について悪意であったとしても、丙が甲の生存について善意だったなら、丙は当該不動産を取得することができる。


胡桃「これも難しくはないわね」
建太郎「司法試験というと短答式の問題文もやたらと長いイメージだけど、そうでもないんだな」
胡桃「ただ、短くても、引っ掛かりやすい問題もあるわよ」
胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「失踪の宣告の取消しがあると、失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。とある通りだよな」

(失踪の宣告の取消し)
第三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

建太郎「だから時効取得できないと」
胡桃「ぶー。不正解」
建太郎「えっ? 違うの?」
胡桃「失踪宣告が取り消されると、失踪宣告は初めに遡ってなかったものとして扱われるのよ。その結果、乙は財産についてどういう関係になるかわかるかしら?」
建太郎「無権利者だったことになる」
胡桃「そうよ。権限なくして他人の物を占有していたことになるのよ。するとどうなるかわかるでしょ?」
建太郎「……時効取得しうるということか」

(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

胡桃「そうよ。十年、あるいは二十年経過していれば、当然時効取得できるのよ」
建太郎「ふーむ。そう考えるのか」
胡桃「次、2はどうかしら」
建太郎「これは、条文そのままだな」

(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

建太郎「死亡によっては当然終了するわけではないと。生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示した場合に限るわけだな」
胡桃「いわゆる死後離縁ということよ。次、3はどうかしら」
建太郎「恩給支給を免れていたということは、国はそれによって、財産を得ていたとも言える?」
胡桃「給付債務を免れていたことになるわね。するとどうなるかしら?」
建太郎「その分の給付義務を負うことになると」
胡桃「そうよ。次、4はどうかしら」
建太郎「悪意の不当利得者ということになるから利益に利息を付して返還しなければならない。ということか?」

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

胡桃「第七百四条にはそう定めがあるけど、第三十二条はどうかしら?」
建太郎「うーん……。『失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。』善意か悪意かで区別していない?」
胡桃「そうよ。区別していないのよ。ということは、利益に利息を付して返還しなければならないということにはならないわ」
建太郎「ということは間違いということだな」
胡桃「条文を読む限りわね。ただ、学説には、不当利得の規定を適用すべしとする説もあるわ」
建太郎「とりあえず、間違いでいいわけだな」
胡桃「次、5はどうかしら」
建太郎「これは判例があったんだな。乙と丙の双方が、善意でなければならないという話だった」
胡桃「そうね。基本的な判例だわ。というわけで、答えは?」
建太郎「正しいのは、2、3の二つだな」




胡桃や建太郎が登場する楽しい教材は以下です。

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posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 08:32| 司法試験入門問題