2019年04月12日

権利の変動 1−29 #司法試験 入門 択一式 #民法 オリジナル問題

次の記述のうち、正しいものはどれか。

1、委任状が、代理権を与えたる旨表示したものというためには、少なくとも代理人が誰かを特定することができるだけの記載が委任状に為されている必要がある。

2、代理権授与の表示による表見代理については、表見代理が、権利外観法理を基礎としている以上、相手方の善意無過失が要件となる。

3、代理権踰越の表見代理が認められるのは、本人に虚偽の外観の作出に帰責性があるからである。よって、本人に帰責性がない法定代理には、民法110条は適用されない。

4、代理権消滅後の表見代理は、無権代理人にかつて代理権があったことを知っており、未だに代理権があると信頼したものを保護するための規定であるから、無権代理人と以前取引をしたことがある者など、無権代理人が以前代理権を有していた事実を知っている者以外には適用がない。

5、かつて代理人であった者が以前に与えられていた代理権の範囲外の行為をした場合であっても、表見代理の成立が認められる。


胡桃「これも基本的な問題だわ」
建太郎「おう。代理に関する問題だな」


胡桃「まず、1はどう考えたらいいかしら?」
建太郎「要するに、白紙委任状を渡しただけで、代理権を与えたことになるのかどうかだな。判例は次のように考えていると」

甲が、乙の消費貸借債務を保証するため、丙またはその委任する第三者に右保証契約締結の代理権を与える目的で、自己の白紙委任状および印鑑証明書などを丙に交付した場合において、乙が丙から右白紙委任状などの交付を受けてこれを利用し、みずから甲の代理人として貸主と連帯保証契約を締結したときは、甲は民法第一〇九条にいう「第三者ニ対シテ他人ニ代理権ヲ与ヘタル旨ヲ表示シタル者」にあたる。(最判昭和42年11月10日)

胡桃「そうね。すると設問は間違いということになるわ。2はどうかしら?」
建太郎「正しいな。条文通りだ」

民法
(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「110条が、法定代理にも適用されるかどうかの問題だな。判例は、適用されるとしている」

民法
(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

胡桃「そうね。古い判例(大連判昭和17年5月20日)で法定代理にも適用されるとしているわ」

胡桃「4はどうかしら?」
建太郎「これはおかしいって、常識で分かるよな」
胡桃「判例だから押さえておいてね」

民法一一二条の表見代理が成立するためには、相手方が、代理権の消滅する前に代理人と取引をしたことがあることを要するものではなく、かような事実は、同条所定の相手方の善意無過失に関する認定のための一資料となるにとどまるものと解すべきである。(最判昭和44年7月25日)

民法
(代理権消滅後の表見代理等)
第百十二条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

建太郎「うん。相手方の善意無過失に関する認定のための一資料となるにとどまるものと解すべきということだな」
胡桃「5はどうかしら?」
建太郎「正しいな。改正法の第百十二条2項が適用される場面だ」
胡桃「そうね。ということで正しいのは?」
建太郎「2と5だな」




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posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 08:44| 司法試験入門問題