2019年04月17日

権利の変動 1−32 #司法試験 入門 択一式 #民法 オリジナル問題

X会社の従業員Aは、100万円の手形を振り出す権限しかあたえれていないのに、X社名義の1000万円の約束手形の振出を偽造して、取引先のB会社に譲渡した。
この場合における次の記述のうち正しいものはどれか。

1、BがXに使用者責任を追及する場合、Aに一般不法行為の要件がそなわっていなければならない。これに対して、BがXに表見代理責任を追及する場合は、Aに過失がなくてもよい。

2、BがXに使用者責任を追及する場合、Bに軽過失があっても、Xの使用者責任の成否に関係ない。BがXに表見代理責任を追及する場合も、Bの過失の有無は、Xの表見代理責任の成否に関係ない。

3、Xに使用者責任が成立する場合に、BがXに請求することができるのは、手形金相当額の損害賠償請求であって、手形金それ自体ではない。これに対して、Xに表見代理責任が成立する場合は、Bは手形金それ自体を請求することができる。

4、Xに使用者責任が成立する場合、BはAに対して不法行為責任を追及することができる。また、Xに表見代理責任が成立する場合、BはAに対して、無権代理人の責任を追及することができない。

5、Xが、Aの選任、監督について、相当の注意をしたこと又は相当の注意をしても、損害が発生したことを証明した場合は、BはXに使用者責任を追及することはできない。また、Aの無権代理行為について、Xに過失がない場合は、BはXに対して、表見代理責任を追及することができない。


建太郎「むむっ。これはややこしい問題だな」
胡桃「基本を押さえていれば難しくないわよ」

胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「正しいな。使用者責任を追及するには加害者に一般不法行為の要件が備わって居なければならないのはそのとおり。それから、表見代理の場合は、無権代理人の過失は要件とされていない」

民法
(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

※(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

胡桃「そうね。2はどうかしら?」
建太郎「前半は正しいな。使用者責任を追及するのに、被害者の軽過失は問題にならない。過失相殺の問題になるだけだ。後半は間違いだな。権限踰越の表見代理が成立するためには、相手方の善意無過失が要件になっていると」
胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「正しいな。使用者責任を追及できる場合に、請求できるのは、損害賠償金であって、契約の履行ではないと。それに対して、表見代理が成立する場合は契約の履行を求めることができるわけだから、手形金それ自体を請求することができる。と」
胡桃「そうね。4はどうかしら?」
建太郎「前半は正しいな。使用者責任を追及できるということは加害者に不法行為が成立しているから、当然、損害賠償請求もできると。それに対して、表見代理責任が成立する場合も、相手方としては、表見代理責任の追及と無権代理責任の追及を選択的に主張できるとされていた」
胡桃「そうね。判例も次のように述べているわ」

無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し同法一一七条の責任を問うことができるものと解するのが相当である。(最判昭和62年7月7日)

※民法
(無権代理人の責任)
第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

胡桃「5はどうかしら?」
建太郎「前半は正しいな。次の条文のとおりだ」

民法
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

建太郎「ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。とあるとおりだな」
胡桃「そうね。後半はどうかしら?」
建太郎「間違いだな。権限踰越の表見代理の場合、本人の過失は不要とされている」

民法第一一〇条による本人の責任は、いわゆる正当の理由が本人の過失によつて生じたことを要件とするものではない。(最判昭和34年2月5日)

胡桃「そうね。ということで答えは?」
建太郎「正しいのは、1と3だな」




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posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 08:45| 司法試験入門問題