2019年05月10日

権利の変動 1−39 #司法試験 入門 択一式 #民法 オリジナル問題

次の記述のうち、誤っているものはどれか。


1、乙は、かつて、甲の代理人だったが、甲の代理人として、丙に甲所有の不動産を売却する契約を締結した。甲はこれ幸いと、丙に不動産を引き渡す準備をした。
これに対して、丙は売買契約時は乙の無権代理について善意であったが、後に乙の無権代理行為をしり、売買契約を取消した。この場合は、甲は乙の無権代理行為を追認し、丙に売買代金の支払いを請求できない。一方、丙は乙に対して無権代理人の責任を追及できる。

2、甲は乙から土地の贈与を受けた際にその土地の所有権移転登記手続きのために、実印、登記済証等の交付を受けた。しかし、甲は登記手続きをせずに、これらの実印を利用し、乙の代理人として丙との間で金銭消費貸借契約を締結した。
甲の無権代理行為について、丙が善意無過失であれば、丙は、乙に対して、金銭の返還を請求することができ、また、甲に対して無権代理人の責任を追及することができる。

3、甲法人の理事乙は、土地を売却する場合に役員会の承認を要求する甲法人の定款に違反して、役員会の承認がないにもかかわらず、甲法人を代表して、丙に土地を売却した。
この場合は、丙が甲法人の定款の存在について、善意である場合は、丙は甲に対して、土地の引き渡しを請求することができる。また、丙が甲法人の定款について悪意である場合でも、甲に対して、土地の引き渡しを請求できる場合がある。


建太郎「むむっ……。やたらと設定の多い問題だな」
胡桃「それでも、基本問題だわ」


胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「この事例では、甲は引渡しの準備をしているけど、追認したわけではないんだよな」
胡桃「そうね。丙の取消しの方が先ということになるわ」
建太郎「すると、丙が取り消した後は、甲としては追認することはできなくなるよな。次の条文のとおり」

民法
(無権代理の相手方の取消権)
第百十五条 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

建太郎「だから、甲は乙の無権代理行為を追認し、丙に売買代金の支払いを請求できない。のは正しい」
胡桃「そうね。後半部分はどうかしら」
建太郎「取消権が行使されると、契約は最初からなかったことになるから、無権代理人の責任を追及することはできないと。間違いだな」
胡桃「次、2はどうかしら?」
建太郎「登記申請のための書類を付与されたことが、110条の表見代理が成立するための基本代理権に該当するかどうかの問題だな」

民法
(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

※(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

胡桃「そうね。どう考えたらいいかしら?」
建太郎「基本的には次のように解されていると」

取引の安全を目的とする表見代理制度の本旨に照らせば、民法一一〇条の権限踰越による表見代理が成立するために必要とされる基本代理権は、私法上の行為についての代理権であることを要し、公法上の行為についての代理権はこれに当らないと解するのが相当である。(最判昭和39年4月2日)

建太郎「ただ、例外はあって次のように解されていると」

本人から登記申請を委任されてこれに必要な権限を与えられた者が右権限をこえて第三者と取引行為をした場合において、その登記申請が本人の私法上の契約による義務の履行のためになされるものであるときは、その権限を基本代理権として、右第三者との問の行為につき民法一一〇条を適用し、表見代理の成立を認めることができる。(最判昭和46年6月3日)

胡桃「すると設問はどうかしら?」
建太郎「正しいということになるな」
胡桃「そうね。次、3はどうかしら?」
建太郎「これも判例の事例だな。まず、善意の定義については次のように解されていると」

「善意」とは、理事の代表権に制限を加える定款の規定又は総会の決議の存在を知らないことをいうと解すべきである。(最判昭和60年11月29日)

建太郎「だから、定款の存在について善意であれば、引渡しを請求できると」
胡桃「後半部分はどうかしら?」
建太郎「正しいな。判例も次のように述べている」

第三者が善意であるとはいえない場合であつても、第三者において、漁業協同組合の理事が当該具体的行為につき同組合を代表する権限を有するものと信じ、かつ、このように信じるにつき正当の理由があるときは、民法一一〇条を類推適用し、同組合は右行為につき責任を負うものと解するのが相当である。(最判昭和60年11月29日)

建太郎「つまり、善意でなくても、正当な理由があれば、民法一一〇条を類推適用してもよいと」
胡桃「そうね。すると答えは?」
建太郎「間違いは1だな」




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posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 20:09| 司法試験入門問題