2018年10月02日

民法の解釈技術

民法の条文は、そのまま読むだけでは、あまり役に立たない。
条文の意味をはっきりさせるために、『解釈』を行う必要が生じるが、解釈の方法ーー解釈技術にはいくつかの方法がある。
なお、民法の解釈にあたっては、法定安定性と具体的妥当性の2つの要請をどう調整するかが問題になる。ということを押さえておこう。

解釈技術としては次の6つがある。

1、文理解釈
2、論理解釈
3、拡張解釈
4、縮小解釈
5、反対解釈
6、類推解釈

1、文理解釈
これは文字通り、条文の文章をそのまま読んで、そのままに理解するという方法である。
文理解釈で良いならば、誰が読んでも、解釈に違いが生じないため、法的安定性の面からは大変メリットがあると言えるが、具体的妥当性に欠けることが多い。

2、論理解釈
これは、文理解釈を補う解釈技術である。民法は、全体としてひとつの論理体系を構成しており、各条文もこの論理体系との関係において解釈されなければならないとされている。
これにより、条文の文言の足りないところや不明確なところを補うことができるので、文理解釈を補うことができるということである。

3、拡張解釈と4、縮小解釈
文字通り、条文の文理を拡張して解釈したり、逆に縮小して解釈する方法である。
拡張解釈がなされれば、民法の条文が適用される場面が広がることになるし、逆に縮小すれば、適用場面が狭まるということである。

縮小解釈の例としては、民法第百七十七条の第三者が挙げられる。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

この第三者は、当事者以外の誰でも良いわけではなく、「登記の欠缺を主張するにつき、正当の利益を有する者」と解釈されており、第三者の範囲を狭めている。

5、反対解釈
条文に規定されていない事項については、規定されている事項と反対に解釈して良いとする解釈技術である。

例えば次の条文がある。

(時効の利益の放棄)
第百四十六条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

この条文は、時効の利益は、時効完成前は放棄することができないと解釈できるわけであるが、じゃあ、時効が完成した後はどうなのか? この点については、条文に規定がない。
そこで、反対解釈をし、時効完成後の時効利益の放棄は許されると解釈するわけである。

6、類推解釈
反対解釈同様に条文に規定されていない事項について、判断する際に用いる解釈方法である。
文字通り、類似の事項を取り扱った条文に基づいて、それと同様の効果を導こうとする解釈技術である。
民法の条文に定められている文言だけでは、世の中に起こりうる事柄の全てに対応できるわけではないから、類推解釈が必要な場面が多い。6つの解釈方法の中でも、最も重要な解釈と言える。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 23:33| 民法

2018年10月04日

民法に定められている解釈基準

民法の解釈技術としては、先に述べたように、
1、文理解釈
2、論理解釈
3、拡張解釈
4、縮小解釈
5、反対解釈
6、類推解釈
の六つがあげられている。

民法の解釈は、一般的確実性――法的安定性と具体的妥当性を満足させることが理想とされている。
しかし、この二つを満足させようとすると矛盾することが多い。

一般的確実性――法的安定性に資する解釈は、
1、文理解釈
2、形式的な論理解釈
5、反対解釈
であるが、これらの解釈は、具体的妥当性を満足させることが難しい。

一方、具体的妥当性に資する解釈は、
2、目的的な論理解釈
3、拡張解釈
6、類推解釈
であるが、一般的確実性――法的安定性を満足させることが難しい。

民法の解釈に当たっては、この両者をどう調和させるか。あるいはどちらを優先させるかが問題となる。

なお、民法の条文には、解釈方法についての規定は、たったの一条しか設けられていない。
次の条文である。

(解釈の基準)
第二条 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

この条文が機能するのは、主に親族法相続法の分野であり、契約一般ではあまり役に立たない。


posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 20:00| 民法

2018年10月09日

私権とは?

私権とは、私法上の権利すなわち、私法上の法律関係について認められる権利であり、一般的な社会生活つまり、私的生活における利益を享受することのできる法律的な力ということができる。
民法上、私権という言葉が出てくるのは次の条文のみである。

(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

第一節 権利能力
第三条 私権の享有は、出生に始まる。
2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

(外国法人)
第三十五条 外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。
2 前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。

条文上には、私権とあるだけで、具体的にどのような権利なのかは定められていない。
ただ、私権については、次のような内容が含まれると解されている。

財産権
身分権
人格権
社員権
支配権
請求権
形成権


posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 20:27| 民法