2018年10月11日

私権の内容

次の権利が私権とされているが、その具体的内容をひとつひとつ確認していこう。

財産権
経済的価値を有する財貨による生活上の利益を内容とし、主に物権と債権が中心となる。その他、鉱業権、漁業権、特許権なども財産権とされている。

身分権
親子、配偶者、親族などの身分的地位に伴う生活上の利益を内容としている。

人格権
人の生命、身体、自由、名誉、プライバシーなど、人格そのものと分離することができない生活上の利益を内容としている。

社員権
団体の一員としての権利である。例えば株式会社の株主としての地位を意味している。

支配権
他人を解すること無く、権利者が直接に支配できる権利のことである。例えば、物権である所有権を有するものはその目的物について、使用、収益、処分をすることができ、この行為について他人を解する必要はない。

請求権
特定の人に対してある行為を要求することができる権利のことで、債権がその典型例である。

形成権
新たな法律関係を形成する法律的な力のことである。取消権や解除権がその典型例である。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 23:46| 民法

2018年10月15日

私権行使の基本原則1

私権行使の基本原則については、民法に規定がある。次のとおりである。

(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。


1項に、私権は、公共の福祉に適合しなければならない。とあるのは、私権が絶対的なものではなく、公共の福祉と調和しなければならないことを意味している。

2項は、いわゆる信義誠実の原則について規定している。
私権の行使や義務の履行は、社会生活一般に期待されている信頼を裏切らないよう、相互に誠意を持って行わなければならないことを意味している。
信義誠実の原則は主に債権法の分野で発展してきたものであるが、現在では、民法第一条に置かれていることからもわかる通り、債権法に限らず、物権法や身分法の分野でも、適用され、民法の指導理念とされている。

次のような判例がある。

信義誠実の原則は、単に権利の行使、義務の履行についてのみならず、契約の趣旨の解釈についてもその基準となる。(最判昭和32年7月5日)



posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 22:54| 民法

2018年10月16日

私権行使の基本原則2 信義誠実の原則の具体例

信義誠実の原則が適用された具体例をざっとみておこう。

1、10万円の債務の弁済に、わずかに100円不足しているに過ぎない場合に、債権証書の返還を拒んだり、供託の無効を主張することは、信義則に反するとされている。(大判昭和9年2月26日、大判昭和13年6月11日)

2、解除権を有する者が久しきに亘りこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至つたため、その後にこれを行使することが信義誠実に反すると認められるような特段の事由がある場合には、右解除は許されないと解するのが相当である。(最判昭和30年11月22日)

3、債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかつたときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されない。
なぜなら、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろらから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである。また、かく解しても、永続した社会秩序の維持を目的とする時効制度の存在理由に反するものでもない。(最大判昭和41年4月20日)

4、甲が乙から山林を買い受けて二三年余の間これを占有している事実を知つている丙が、甲の所有権取得登記がされていないのに乗じ、甲に高値で売りつけて利益を得る目的をもつて、右山林を乙から買い受けてその旨の登記を経た等判示の事情がある場合には、丙はいわゆる背信的悪意者として、甲の所有権取得について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらない。
いわゆる背信的悪意者のことである。(最判昭和43年8月2日)

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 22:35| 民法