2018年10月23日

胎児の権利能力1

胎児は、出生するまでは、権利能力を有しないのが原則である。
しかし、今日の医療においては、胎児は、無事に生まれてくる可能性が高く、その意味ですでに、権利能力を有しているとも言い得る。
出生が僅かに遅いために、何らかの権利行使ができなくなったとしたら、不条理である。
そこで、胎児に対しても、一定の場合に、権利能力を認めるべきではないかとの考えがででくる。

ではどのようにして、胎児に権利能力を認めるか。
これについては、一般主義と個別主義という考え方がある。
一般主義とは、一般的に胎児は生まれたものとみなすものである。つまり、あらゆる法律行為について、出生している子と同様の権利能力を認めてしまおうということある。
それに対して、個別主義は、特定の法律行為に限定して、例外的に生まれたものとみなす制度である。

日本の民法では、個別主義が採用されている。
では、具体的に、どのような場合に胎児に権利能力が認められているのか。
民法に規定があるのでチェックしておこう。

(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
第七百二十一条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。

(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

(相続人に関する規定の準用)
第九百六十五条 第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者について準用する。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 21:20| 民法

2018年10月24日

胎児の権利能力2 死因贈与

胎児は相続に関してはすでに生まれたものとみなされる。

(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

例えば、胎児が遺贈を受けることはできる。

では、ある人が胎児に対して死因贈与しようとした場合、可能なのか?

まず、死因贈与についての民法の規定には次のようにある。

(死因贈与)
第五百五十四条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

すると、遺贈と同様に死因贈与を受けることも問題ないと言うことになるが、無条件で肯定されるわけではない。
死因贈与は、贈与契約である。契約を締結するためには、贈与者と受贈者が存在していなければならないわけであるが、受贈者たる胎児は存在しない。
そして、停止条件説によると、胎児が生まれていない間は、胎児の法定代理人は存在しないことになるため、死因贈与の申し込みに対して、承諾する者がいないことになってしまうため、死因贈与を受けられないと解することになる。
それに対して、解除条件説の立場であれば、胎児が生まれていない間でも、胎児の法定代理人が存在することになるから、胎児の代理人との間で死因贈与契約を締結できるということになる。



posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 22:07| 民法

胎児の認知

胎児が父に対して、認知を求めることはできない。

民法に規定がないし、また、停止条件説の立場からすると、胎児である間は、法定代理人が存在しないため、認知請求のしようがないからである。

認知請求は胎児が生まれてかるするしかない。

(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。

一方、父から、胎児を認知することはできる。
次の条文の通り。

(胎児又は死亡した子の認知)
第七百八十三条 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
2 父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。

この制度の趣旨は、胎児について例外扱いをしようとするものではない。
胎児の出生前に父が死亡する危険があり、子の出生を待って任意認知することが不可能となる恐れがあるときに、その父と子との間に法律上の非嫡出子関係を確実にしようとするために認められたものである。

なお、戸籍実務では、胎児認知の届け出があっても、受理後直ちに戸籍にその旨が記載されるわけではない。
その旨の付箋が付されるだけで、出生届を待って、出生事項とともに職権で認知事項が記載されるという扱いになっている。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 22:19| 民法