2018年11月04日

外国人の権利能力

すべての自然人は、権利能力を有するとされているが、この自然人には、当然、外国人も含まれる。

民法にも、次の規定が設けられている。

第一節 権利能力
第三条 私権の享有は、出生に始まる。
2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

ここで言う外国人とは、日本の国籍を有しない自然人を意味する。
ね例えば、アメリカの国籍を有するものはもちろん、外国人であるが、国籍を有しない無国籍人も外国人に該当することになる。
国籍を有していなくても、自然人であれば権利能力を有することに変わりはない。

なお、外国人は、一定の場合は、権利能力が制限されることになっている。条文にあるとおり、「法令又は条約の規定により」制約されることがある。

具体的にはどういう法律があるだろうか?

例えば次のような場合である。

鉱業法
(鉱業権者の資格)
第十七条 日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない。但し、条約に別段の定があるときは、この限りでない。

公証人法
第十二条 左ノ条件ヲ具備スル者ニ非サレハ公証人ニ任セラルルコトヲ得ス
一 日本国民ニシテ成年者タルコト
二 一定ノ試験ニ合格シタル後六月以上公証人見習トシテ実地修習ヲ為シタルコト


いずれも資格者足りうる者は、日本国民に限定されており、外国人では、資格者となることはできない。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 04:46| 民法

2018年11月03日

同時死亡の推定

親子が同じ車に乗っていて交通事故に遭い、どちらも死亡してしまったが、どちらが先に死亡したのか、はっきりしない。
この場合は、民法の規定によって、同時に死亡したものと推定される。
次のとおりである。

第六節 同時死亡の推定
第三十二条の二 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

同時死亡の推定の効力は、次の3つである。

1、死亡者相互間では、相続が生じない。
2、死亡者間の遺贈の効力は生じない。
3、代襲相続は認められる。

なお、同時死亡の推定の規定は、「みなす」ものではなく、「推定」であるから、利害関係人が証拠を上げて、証明すれば覆せる。

同時死亡の推定の典型例は、今あげた、親子が同時に危難に遭遇した場合であるが、次のような場合も、同時死亡の推定の規定が適用されることを押さえておこう。

1、別々の場所で別々の危難に遭遇したが、一方についての死亡時期が不明確である場合。
例えば、父は、交通事故に遭遇して死亡し、その日時ははっきりしているが、同じ時期に、山で遭難し、遺体で発見された子は、いつ死亡したのかはっきりしない場合である。

2、危難に遭遇していなくても、一方の死亡時期が不明確である場合。
例えば、子は、病院で病死したために、死亡日時がはっきりしている一方、父は家で孤独死していたため、死亡の日時がはっきりしないような場合である。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 04:56| 民法

死亡と戸籍

死亡は、通常、意思の死亡診断、死体検案により確認され、届出義務者が死亡の年月日、場所等の事項を届出書に記載し、診断書または検案書を添付して届け出ることにより、戸籍に記載される。
そして、この戸籍の記載に推定力が認められる。

戸籍法
第八十六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
○2 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。
一 死亡の年月日時分及び場所
二 その他法務省令で定める事項
○3 やむを得ない事由によつて診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。


では、大災害や大事故に巻き込まれたために、死体が確認できなかったり、いつ死亡したのかの確認が困難な場合はどうすべきか?

この場合は、認定死亡という制度がある。

戸籍法
第八十九条 水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。

これによって戸籍に死亡したものとして記載されることになる。
この場合、特に反証のない限り、戸籍記載の死亡の日に死亡したものと認められる。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 04:42| 民法

2018年10月29日

権利能力の終期

自然人の権利能力の終期については、民法上に規定はないが、死亡の時と解されている。
では、どういう状態になった時に死亡したとされるのかについては、心臓の停止を持って死亡とする心臓停止説が、通説である。もっとも、脳死も人の死であるとする考えもある。

自然人の権利能力の喪失事由は、死亡のみである。

後見開始の審判を受けたこと。
破産宣告を受けたこと。
失踪宣告を受けたこと。

これらはいずれも、権利能力喪失の事由とはならない。
これらの事由があると行為能力について、一定の制約が課されることもあるが、権利能力だけは、喪失することはない。

また、失踪宣告を受けた者でも、実際にはよその場所で生きていたとすれば、その者が権利能力を失うことはない。
第三十条の条文に、「不在者」とあるように、失踪宣告は、従来の住所地における法律関係を終了させる制度であり、宣告を受けた者の権利能力剥奪を目的とするものではないからである。

(失踪の宣告)
第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
(失踪の宣告の効力)
第三十一条 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 20:50| 民法

胎児の権利能力 判例と登記実務の違い

判例は、胎児の権利能力について、停止条件説を採っている一方、登記実務は、解除条件説を採用している。
これは、判例と登記実務が対立していると考えるべきだろうか?

そうではないと解するべきである。
胎児の利益を再優先に考えた場合、上記のような結論になったと考えるべきであろう。

判例の不法行為の事例では、胎児の代理人が勝手に相手方と和解した結果、胎児が不利益を被ったと言える事例で、この場合、胎児の権利を保護するためには、停止条件説を採る方が都合がよかったのである。

一方、登記実務では、胎児が相続人となる可能性があることを登記上に表現しておくことが胎児の利益に資することになる。そのため、解除条件説の立場を採ったということができる。

なお、登記実務でも、胎児の相続登記能力は認めているが、胎児である間に、胎児のために、遺産分割をすることやその他の処分行為をすることは、認めていない。
胎児のために遺産分割をすることは、胎児の利益が侵害される場合もありうるからである。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 20:35| 民法

2018年10月25日

胎児の権利能力 解除条件説

民法は、不法行為、相続、遺贈の場合に、胎児はすでに生まれたものとみなすとしているが、その法的意味は何か?

今回は解除条件説の考えを確認しておこう。

解除条件説は、子が胎児である間も、生まれたものとみなされる範囲において、制限的な権利能力を有することとし、生きて生まれなかったことを解除条件として、権利能力が遡って消滅するというものである。

つまり、胎児も生きている人と同様に扱って、法律関係を処理することになるわけで、胎児のための法定代理人も存在することになる。
法定代理人が胎児に代わって、権利行使をするわけである。

胎児が生きて生まれた場合は、もちろん、法定代理人が処理した法律関係に変動は生じない。
一方、死産の場合は、胎児の権利能力が遡って消滅するため、胎児の存在を前提としてなされた法律関係の処理は、改めてやり直すことになる。

民法では、先に述べたとおり、判例は停止条件説を採っている。
一方、登記実務においては、先例は相続登記について、胎児中に相続人として、胎児名義で相続登記をすることを認めている。
例えば、「亡甲野太郎妻甲野花子胎児」の名義によって、相続登記をすることができるとされている。


posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 21:19| 民法

胎児の権利能力 停止条件説

民法は、不法行為、相続、遺贈の場合に、胎児はすでに生まれたものとみなすとしているが、その法的意味は何か?

これについては、停止条件説と解除条件説がある。

停止条件説の考え方は次のとおりである。

その子が胎児である間は、権利能力はなく、生きて生まれたことを停止条件として、権利能力を取得するが、その効力は、問題発生時、つまり、不法行為や相続、遺贈が生じた時に遡及するという考えである。

停止条件説によると胎児のままでは権利能力を有しないことになるため、その間に、不法行為や相続、遺贈が生じても、胎児の存在を無視して法律関係を処理することになる。
そもそも、権利能力がないため、胎児の法定代理人も存在しないのである。

生きて生まれるという条件が成就した場合に、権利能力取得の効力が生じ、その効果が訴求することになる。

一方死産だった場合は、胎児が存在しないものとして処理された法律関係には、何らの変動も生じないことになる。
なお、判例は、阪神電鉄事件において、不法行為による損害賠償請求権につき、停止条件説を採っている。
次のとおりである。

胎児の損害賠償請求権につき、その親族が胎児のために加害者と行った和解は、胎児を拘束しない。(大判昭和7年10月6日)

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 21:05| 民法

2018年10月24日

胎児の認知

胎児が父に対して、認知を求めることはできない。

民法に規定がないし、また、停止条件説の立場からすると、胎児である間は、法定代理人が存在しないため、認知請求のしようがないからである。

認知請求は胎児が生まれてかるするしかない。

(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。

一方、父から、胎児を認知することはできる。
次の条文の通り。

(胎児又は死亡した子の認知)
第七百八十三条 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
2 父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。

この制度の趣旨は、胎児について例外扱いをしようとするものではない。
胎児の出生前に父が死亡する危険があり、子の出生を待って任意認知することが不可能となる恐れがあるときに、その父と子との間に法律上の非嫡出子関係を確実にしようとするために認められたものである。

なお、戸籍実務では、胎児認知の届け出があっても、受理後直ちに戸籍にその旨が記載されるわけではない。
その旨の付箋が付されるだけで、出生届を待って、出生事項とともに職権で認知事項が記載されるという扱いになっている。

posted by 判例六法ラノベ化プロジェクトチーム at 22:19| 民法